人生楽ありゃ苦もあるさ

日帰りはさすがに無理だったので
カプセルで一泊して翌日帰ることにした
テレビでも見ながら疲れていたので眠りについた
6時くらいだったろうか
なんか俺の名前が呼ばれている
起きてみると従業員が「○○さんですよね?」
とたずねてきた
なんかやばいことでもあったんかな?
「はい、そうですけど」
「あの、お財布のほうありますでしょうか?」
え・・・?マジで・・・?顔が青ざめていくのが自分でもわかった
すぐに探すが見つからない
トイレで落ちていたのをお客さんが届けてくれたそうだ
落としたのか・・・でも見つかってよかった・・・
そう思ったのもつかの間だった
「中身はどれくらいお金入ってましたか?」
そう尋ねられてすぐにわかった
中身ないのか・・・・
頭が真っ白になる
「7万くらいです・・・」
「あの〜ちょっと事務所まで来てもらえますか」
「はい・・・」
事務所には俺の財布があった・・・
しかし、お金は全く残っていなかった
そして、うちとしては警察に届けてもらうしかないということ
届けても明らかに人為的に抜き取られているので見つかる可能性はかなり薄いこと
などを説明させた
まぁ、そりゃそうだ
とりあえず遺失物届けみたいのだけ書いた
無くなっていたものは
現金7万ほど
札幌の地下鉄などで使えるウィズユーカードという
プリペイドカードが1万円分
なぜか昔から入れてあった鈴木あみのテレカまでなかった
金目のものは全部抜き取ったって感じだった
カプセルに戻って振り返ってみる
カプセルに泊まるときは財布とか預けることもあるんだが
このホテルは持ち込み禁止だったのでジュースとか買うのに金もいるだろうから
持ったままだった
たぶんトイレにいったときに底の浅いポケットから落ちたのだろう
遠征で疲れていたのもあった、ちょっと酒も飲んだ
みやびちゃんと握手をして浮かれていたのだろうか
こんな初歩的なミスで大金失うなんて・・・
この大東京で札幌から来た田舎者が無一文になった瞬間の心細さったらなかった
1時間ほど放心状態になってちょっと泣いた
どうしよう・・・どうしよう・・・
しかし、幸いにもキャッシュカードとクレジットカードだけは残っていた
確か郵便局に少しならお金残ってるはず
ホテルを出ると郵便局のATMを探す
やっと見つかってカードを入れてみる8千円入っていた
助かった・・・
俺の書き込みを見てももちーずさんが心配して電話をくれた
ヲタの優しさが心に染みた
飛行機代はもう払ってあるのでとりあえず帰ることはできる
本当にほっと安心した
それからの帰り道はもう気持ちは沈んだまま
何やってるんだと自分を責め続けた
7万円もあればもう一回遠征だってできる
良い席だって買える
ウィズユーカードだって1万円分もあったのは
予備校に通うための交通費だった
もしカード類も全部取られていたらもっととんでもないことになっていた
だけどもう終わったことだ
取り返しのつかないことをくよくよしていてもしょうがない
せっかく楽しかったみやびちゃんとの思い出まで悲しいものになってしまう
それこそ何しに行ったんだかわからない
参加費10万円のイベントだったんだ
それでいいじゃないか
俺は10万円以上の思い出を手に入れたんだ
強がってる自分が妙にかわいそうに見えた